歯の根の先が膿んだり腫れたりしたために根管治療を行うが治らない。
歯根端切除術を行える部位ではない。
歯の根にヒビが入っている、割れている。
虫歯が深く、虫歯を全て削ると型とりができなくなってしまう。
などどうしても再度被せ物を入れることができなくなり抜歯が必要になってしまった時に、失われてしまう「噛む」機能を取り戻すための治療法はいくつかあります。
ブリッジ、入れ歯、インプラントなどにより「噛む」機能を取り戻すことができます。移植も「噛む」機能を取り戻す1つの治療法となります。
移植するための「不要な親知らず」がお口の中にあると歯牙移植ができるかもしれません。歯牙移植が必要になるのは歯が失われた時になります。
歯牙移植のイメージは「歯の引越し」といった感じでしょうか。
ご自身の機能していない(噛んでいない)親知らずを歯が欲しいところへ移す治療です。
当然、人体の自己防衛システムの関係でご自身の口の中にある親知らずに限りますが機能していない親知らずを活用することが可能です。
親知らずがうまくくっついてくれればブリッジのように両隣の歯を削る必要もありませんし、入れ歯のように取り外す必要もありません。
またインプラントは金属の棒(チタン)ですが親知らずはご自身のものですので根の表面には生きた組織「歯根膜」が存在しています。
歯根膜は人間が噛んだときの歯に加わる力を感知する組織ですので「歯応え」や「歯触り」「噛み心地」が復活します。
また歯根膜は生きた組織であり血流がありますので歯周病の原因菌と戦うことも可能です。(インプラントはチタン製なので虫歯にはなりませんが一度歯周病にかかるとご自身の歯よりも進行が早くコントロールすることが困難であることが知られています。)
当院歯科医師は開業前より積極的に歯牙移植に取り組んでいることから経過観察ができている症例で長いものでは15年を越えるものもあります。10年を越える症例も多くありますが、残念ながら10年間もたない症例も存在しております。
人間の骨は5〜10年かけて一新しており骨の表面には常に「古い骨を溶かす細胞」と「新しい骨を作る細胞」が同時に仕事をしています。移植した歯の歯根膜が一部でもうまく引越しできず、移植する歯の根と骨が直接くっついてしまうと骨の生まれ変わりに取り込まれて歯の根っこが溶かされてしまうようです。こうなってしまうと長期に使うことは出来なくなってしまいます。
当院ではコンビナートの患者さんも多く、経過を追いかけることができていない症例もありますが感覚的には5年間で抜歯が必要となる症例(移植治療がうまくいかずにくっつかないものも含め)はあまりないように思いますが、10年を越えてこの歯は元からここに生えている歯と同じように経過していくだろうな〜と思える歯は残念ながら70%よりは少なく感じています。
歯牙移植についての学術的な根拠のある論文は少ないようですが最も症例数の多い論文「712歯の臨床統計に基づく、自家歯牙移植のサバイバルレート 黒田昌彦ら」によると患者さんや歯牙の残っている状態など、条件を絞ることで10年間もっているのが88%を越えるそうです。私の医院での治療がこのような結果を得られているとは申し上げられませんが90%近くが10年間もつ可能性のある治療であれば検討の余地は十分あると思います。
歯牙移植について公平にお伝えするとするならば、失われた「噛む」機能を取り戻す治療法のうち、
「うまくいった歯牙移植の治療はどんな治療よりも優れている。」ブリッジ、入れ歯、インプラントは比較の対象にすらなれないと思います。
しかし全部がそのような経過を辿れるわけではなさそうです。(上記の論文でも条件を絞らないで経過を見ると10年残っている症例は73%)
言い方を変えれば30%くらいは10年未満で再度治療(抜歯)が必要になるということです。最初からインプラントであれば10年もつ症例が70%ということはないので(もっと予後がいい)「インプラントの方が10年間もつ確率は高い。」
このような伝え方になるかと思います。よく考えてから治療法を決めていただければと思います。どのような治療法でも正解はありませんが治療法を決めるお手伝いはできますのでご相談ください。
当院の移植などの歯を残す治療法が評価され全国の歯科医療従事者を対象にしたウェブセミナー動画も販売されております。
(歯科医師が対象なので専門用語での解説になり患者さん向けではありません)
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